日常の短歌 第1話

去年の笹井宏之賞に出したものからいくつか。

 

傷つけることへの恐れ方としていつまでも僕の弱い筆圧


実家から雑なLINEをしてきてよ畳の写真とか送ってよ

 

三種のチーズ牛丼正しくオーダーしチーズ牛丼と復唱される


ノスタルジーしたいときは各停に乗る一駅ごとに記憶を開く


広告の動画をやり過ごす間見つめる印象派展のポスター


好きな子の名前パスワードにしてた今だと短すぎてダメなやつ


食べログで3.5点のラーメン屋のずっと壊れている食券機


卒論でやった作家の二番目の恋人の名が思い出せない


暗すぎず明るすぎない照明がちょうどいいわけでもない僕の部屋


「ご自宅用」の言葉の意味が分からずにLOFTのレジでヘラヘラ笑う


10年間通い続けてるヒトカラのレジのお姉さんのスゴい手際


52は4の倍数ぽくないね共感されないことだとしても


ポケットにファミマのレシートくにゃくにゃといつまでも追憶のファミチキ


くせっ毛を活かすっていう概念を教わる八月の美容室


目玉焼きおいしいという価値観を軸にやらせていただいてます


心臓がハーツでハツになったことちょっといいなと思った心


スクランブル交差点を行く人々の各々の途方もない目的地