ラブライブ!サンシャイン!! 短歌集『終わらない海』

3月22日(日)の僕ラブ25にて頒布する新刊『終わらない海』に収録の全作品(210首)を公開します。できるだけ多くの方に届きますように。

 

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透明な日々に光は差しこんで ねえこの海が青く見えるよ


孤独な鼓動
吾輩は普通怪獣ちかちーだ輝きたいって思ったりする
I say と、愛、生、と歌う人たちを追いかけたくて、追いかけて 虹
普通とは孤独の別名かもしれず降る雨に手を差し出している
今はまだ孤独な鼓動水の中沈めば波を生むその鼓動
「私たち海に落ちたね二人でさ。ていうかあれが最初だったね」
届かない星だとしても伸ばす手で夢の扉を揺らしてしまう
指先が触れ合うまでの苦しみは伝わる熱に溶けるごと消え
空の青、海原の青、僕がまだ見たことのないこの春の青
ユメ語る言葉はいつか踊り出しそのことをただ歌と呼びたり

 

水とわれらと
2年越しの君も空からやってくる重い思いを振りかざすため
この国じゃ金色だって称される髪をリングに結って完成
海満ちる砂の汀に見出せる歩みゆく名は水とわれらと
今しかない瞬間だから走り出すドキュメンタリーがはじまっている
紅玉の光ささやくまだ誰も見たことのない「好き」のお話
にゃと鳴くちっちゃな人がステージで纏う純白「惚れたが悪いか」
ルビィという一人称にきらめいたやさしい人の決意の光
図書室の外にも宇宙はあるのだと大きな水に映る星空
手探りで宇宙を作り変えていくパンと書物を燃料にして
Black or White 光の明滅の中で生まれた産み堕とされた
やだったらやだってゆってくれる人探していたの黒い翼が
in this unstable world 堕とされてこの世の羽をヨハネが纏う
悪しき者の眷属としてこの世界の半分くらいを Aqours にあげる

 

もうなにかある
何もないここでわたしが生きてきた十幾年の呼吸を背負う
この場所で名前を呼ばれて生きてきた 胸の熱源空へと飛ばす
遂げてきた呼吸の重み受けとればあなたは普通、普通に怪獣
「千歌ちゃんは悔しくないの?」突き立てて突き立てられて傷ついている
はじめての期待の重さ この海が黄昏の色纏って沈む
呼吸とは吐くところからはじまるのあなたの中にもうなにかある
大洋に太陽沈むこの色をずっと覚えていられますよう

 

太平洋の片隅のこと
正しいかどうかは知らない友思う友の思いに殉ずると決めて
待つことの正しさずっと抱いている胸郭の中 光の屈折
眠れない夜は人より少しだけ多くて待てど光らない海
二年の雨に涙にまみれ切り二人の海にやっと溺れる
二年前叶わなかった夢のこといま叶えたい夢たちのこと
親愛はあなたの言葉 過去を抱き今を見つめて未来をのぞむ
9つの未熟がそっと交わった太平洋の片隅のこと
やわらかに詩を受けとりて孕む海あなたのことが大好きだよと
ヘンな人、ヘンな人ってつぶやいて反芻してる言葉とからだ
あなたってたぐいまれなくあなただね空気を透かす光のなかで

 

MIRAI TICKET
君が私を見るのと違うやり方で君のことずっとずっと見ていた
雨風に晒されつづけこの身体流線形に削ぎ落ちていく
誰よりも知ってるはずの高みから繰り返し繰り返し落ちていく
渡辺曜 君は一人でこの海と風に向かって立っていたのか
「なんだってできちゃう」私の心臓が纏う無数のアンダースタディ
制服と千のペルソナ脱ぎ捨てて燃ゆる汀に素裸で立つ
追いかける背中はここで見失おう僕らのわだちが1になるはず
今ここに0を分かった9人と僕は恒星になれると知った
ひたすらに光の方へ惹かれつつ光りはじめるひとつ、ここのつ
ささやかな燈火だろう太陽にかざせば透ける MIRAI TICKET
刻まれたことの誇りにうち濡れて波打ち際の砂の艶めき

 

サクラピンクの拍動
高き場所見初めはじめた海辺より幾千の歌届くと誓う
三秒後虹のふもとになる場所でおもむろに振り返って君は
アリーナは深々と海 少しでも(手に)緩めば(手に)絡めとられる
ときめきと名指せるようになりたてのメレンゲみたいふわふわの自我
指先はサクラピンクの拍動に包まれて震え震え震え
当たり前ではない一音一音が連なって音楽になっている
音速は光速を超えられなくて光を追い続ける音楽が
0だったことを愛しい疵としてそのたびごとに未来をつくる
二進数的に言わせてもらうなら0から1の次は10
僕たちはやっとつかんだ女神たちの似姿ならぬキミタチノカタチ

 

巨大な真実
空と海が互いを魅入り青き世界大空を漕げ海へ羽ばたけ
太陽と海が巨大な真実でやることだけははっきりしてた
南中の日を一心に浴び切って夏の正当継承者となる
海の音望む女は海へ行き両の手捧げ沈みゆくらむ
波騒ぐ此岸の生を知らぬげに水平線を天使がのぼる
この海が真冬の海になることが想像できない 光溢れる
ここはもう南の果てだ星霜を継いでわたしがたどりついたの
星覆う巨大な水に沈みおりしばし私は人でなくなる
潮の香りと言うには少し強すぎる磯の匂いとともに育った
この島が等しく海底だった頃我と汝として出会っていたの
漁り火を蛍みたいと言う君は見てた私と違う世界を
重すぎるおもいに沈んでいくあいだ地上の君は空を見上げる
君と僕海抜ゼロメートルに立ち核実験はいつでもできる

 

渡辺
Who are you? 冗談交じりに話しかけ I am You! って撃ち返される
渡辺はなんでもできる系のやつだと思っててだと思ってる
星を産むように軽やか渡辺がはっ、とっ、ぱっ、て駆け抜けていく
渡辺が降り立つとこがいつだって世界の中心 僕らは回る
渡辺曜 プールサイド」の文字列を三時間ほど眺めていたり
月曜から金曜までは渡辺曜残り二日を俺は知らない
スポブラか?スポブラなのか?渡辺曜お前を好きになりたくはない
渡辺曜髪をちっちゃく結ぶなよお前を好きになりたくはない
無防備な顔をするなよ渡辺曜お前を好きになりたくはない
渡辺の思ったよりも薄い肩お前を好きになりたくはない
渡辺と俺の知らない渡辺が渡辺のなかに同居している
渡辺にすらりと伸びる四肢があり光や水に浸されている
渡辺は真夏の海を飲み込んで「へへ、しょっぺ」って笑ってたんだ
渡辺は波打ち際に生息しときどき遠い目をする習性
渡辺よお前はお前のままでいろ恋になるのは俺だけでいい
夏芙蓉咲き誇り立つ王国の姫君として笑え、渡辺
光とか輝きとかの謂として渡辺曜よそこにあれかし

 

はずだったんだ
入日射すプールサイドに身を干して熱の在りかを確かめている
心臓の熱さは逃さないように指の先から水に馴染ます
水際に刹那身体を研ぎ澄ます最も水に愛されるよう
溶けたくて何度も何度も落ちてみる七割ほどは水である身を
落ちていく一秒、二秒、その間自由になれるはずだったんだ
落下する、沈む、浮かぶ、息をする。溺れることはうまくできない。
飛び込みと飛び降りの違いについて知らないままで くるくる じゃぼん

 

地上に生きる
「ひらいた」の「ひ」を言うことの切実を背負うあなたの 2nd ツアー
存在を確かめたくてつなぐ手がレールになるってことなんだよね
青春の光たたえたそのままでなお眩しかれと生まれ出づ朱夏
わたくしがあなたを見つけられるまで銀河よどうかこのままでいて
受け取ったのは勇気だけそれだけで歩いていける唯一のやつ
Day2 のセトリでプレイリスト組む繰り返しえぬ一瞬思い
僕のこころ輝いてるかわからない何度でも何度でもきいてくれ
終点に着くのはいつも少しだけさみしい夏の残り香がする
少しだけ先に未来に行く人の大きすぎない背中の光
じゃあ僕は地上に生きる次の夢もやっぱりこの場所からはじめたい

 

最短距離で
諦めたくないの理由の何重奏 2nd Season はじまり告げる
笑いかけるしぐさで昇る太陽を昨日と違う角度で浴びる
雨音に世界を浸すわたしたち不揃いのまま不揃いでいる
たった一つのやり方 諦めず心が輝く方へ最短距離で
軽率に彼岸花など捧げずに私の赤とらえ尽くして
迂闊にもダイヤモンドの横顔に触れて指先から溶けていく
正しさを出会いの中で磨くこと誇りは光 乱反射する
目に見えぬものに満ちてるこの空が降ろす光に生かされている
偶然が重なりあって意志となり未来をこの手につかもうとする
サンシャイン 世界に意味は降りそそぎ君は誰?って問いつづけてる
在るように生きるように触れるように伝えるように犬を拾った。

 

わたしに出会う
砂浜にレッスン靴の足跡が数え切れない形をしてる
Aqours のこと知らないきみに一つだけ波打ち際に刻まれた名だ
光る川どんな名前で呼んでいた感情移入の最前線で
寄せ返す波に押されるようにして一回転してわたしに出会う
父の声に何度絶望したのだろう膝をつくこと堪えたのだろう
語られぬ出来事としてその人が足掻きつづけた歳月のこと
いくつもの if が浮かんで消えていくここは音楽が鳴らない海だ
「それだけが学校を救うってこと?」声は世界を反転させる
その場所へ消えない消えない名を残す 期待とは羽 生まれ直して
北極星のような理想を追いかけて極北の地で研ぎ澄ます夢
舌先に散れる粉雪留めたいものは触れずにいるほかはなく
Crystalize 誓いは固く結晶し羽ばたく者の礎となる
ルビィはもう一人でなんでもできるから新世界にもあなたを連れて

 

あなたに宿る
幾光年孤独な旅路この浦の星の光があなたに宿る
学校は行き過ぎる場所軌跡だけ大事に大事に確かめて飛べ
あなただけに許されているやり方で出来事たちに告げて、farewell
雲の上至るステップ少しずつ少しずつ重ねてきたんだよ
旅の果ていまここにあることだけをあなたもいつか海へと還る
生まれたい音の無数にたゆたえる夜明けの海の支配者となる
それぞれのはじまりの場所確かめてわたしのいるところが空だった
もう先へ進もう僕らが生きてきたイマはココロに、ここにあるから

 

生み出す光
もう全部輝いていたそんなこと気がつくのにも時間がかかる
閉じるべき扉は多く心をば次の世界へ追い込んでいく
閉じるとき扉は重い 絶対にわたし一人じゃできなかったの
「輝きたい」思って動いてへし折れて足掻きまくって差しのべられて
痛かった記憶の方が多いかもしれないそれでもなお輝きは
この瞬間を刻みつづけて原石は微笑むように輝きこぼす
走るから風が生まれてその風で波が生まれて時は流れて
何度でも振り返りたい道はあり曲がりくねって遠く見渡す
二〇一八年七月八日(日)そこに確かにいた小原鞠莉
それなんだこころが求める誇らしさこうして歌いかけたかったの
これまでも走ってきたしこれからも走りつづけて地球を回す
惑う星惑いのままに回るから日々と季節を生み出す光
そしてまたミカンに未完を響かせて次の場所へと向かうのだろう

 

ありがとう
丁寧に落穂を拾うようにしてもう少しだけ地上を歩く
この場所に地上も海も空もある二階席にて太陽となる
六万の暴力的な祈りの手 そんなにもそんなにも優しく
信じてた同じ明日は訪れて信じてたから訪れたんだ
奇跡とか起こらないって思ってた?ここがあなたが生んだ海だよ
歌うとき生まれる海をゆく船でオーケストラにやっと追いつく
並び立つことは覚悟かじゅうと言うときにざわめく心の部分
ありがとうめっちゃ言いたい 人間に声と言葉があってよかった
まっすぐな道でなくても見渡せる少しだけ高い場所に着いたよ
愛してる沼津が世界だった頃今はもう世界中が沼津
何度でもここではじまる物語土地の記憶を孕ませながら
エモさとかいうのではなくただ僕がそうしたいから灯す赤色
唯一つたったひとつのことだけを歌う翼で海を渡れり
光あれと誰かが言ったそのときに生まれたような眩しさでいて

 

記憶は翼
「そうです」と歌い切るときもう一度幕は上がってすべてが叶う
「3人は行方不明」でわたしたちどこにも立っていないみたいだ
わたしたち水から生まれわたしたち自ら生まれ 自ずと巡る
血が人をめぐるように水が町をめぐる何度も生まれ直せる
こんなにも開かれている物語 きみを思えば光るわたしだ
もうずっと前から降り注いでいた光の中にわたしもいたの
叶えられなかった願い語るとき紫色に燦く海が
その肩に重ねた重荷いまはもう透きとおって羽になって あなたを
虹越えるための翼を生やそうよあの日の紙飛行機に似せて
何度目の朝陽を背負いきみたちが肯う星の鼓動 キラキラ
変わること誰しもこわい(だとしても)踏み出すときの記憶は翼
ひとりじゃない一人ひとりの名を刻むエンドロールは波打ち際に

 


6人は9人であり9人は6人である6月9日
はじまりはおわりでおわりははじまりで球形の季節はどこまでも
The sun が A sun ではないことが愛おしくってひらくパラソル
球形をすべて地球の比喩としてメットライフで命に出会う
Yes さえ上手に言えなかった日を10と言う日が遠く眼差す
歌声は空を飛ぶから青空の青の部分はその色だから
水に陽にさらされつづけ僕たちが虹になれないはずがなかった
アウトロはデクレッシェンドこの星に消えない虹の色を残して

 

TL は海
ラブライブ!サンシャイン!!とかいうアニメ人生のすごいネタバレ食らう
SUNRISE のロゴは祝福その度に澄んだ音色で昇る太陽
ついついね Aqours のおわりおもうのよそれがきれいなものだとしても
何度でも出会い直せばいいんだね あなたたちさえそうなのでしょう
君のいるここがはじまり僕のいるここがはじまりそれがはじまり
つづいてく世界のことを告げられてなるほどねって人生をやる
TL は海 その波打ち際に #ラブライブ短歌 つぎつぎ寄せる

 

光の異名
空をゆくもっとも軽やかなかたち 朝な夕なの光を返し
空と水の交わる場所をそう呼んでそうだねそれがわたしたちだね
二〇一六年四月一日から今日まで僕が生きてきたこと
二〇二〇年一月十九日からもわたしが生きていくこと
逆光の中のあなたの記憶しかないね過去とは光の異名
踏みしめてあなたの前に立ちつくすすべての粒子を背景として
遠い遠い呼び声に耳澄ますときそれはあの日の歌声だろう
二〇二〇年二月八日(土)そこに確かにいた小原鞠莉
あの日々にもう戻れないということがちゃんとさみしいイタリアの空

 

生きてきた
これまでをちゃんと抱けているだろうか未来が過去を色づけていく
三津浜はあまりに何の変哲もなくて誰もがたどり着く場所
音楽 何通りものやり方できみの名前を呼んでいました
波という言葉の意味はふいに来て音も光も心も時も
生きてきたことが消えない消せなくてこの海の比喩として立ち尽くす
わたし自身の感情としてここにいる迷わず伸びてゆく海岸線

 

生きてきたことのほかにはなにもなくそのことがただ終わらない海

 

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(全210首)